遺留分対策には、生前贈与が有効!
こんにちは、司法書士の加藤隆史です。シルバーウィークも終わり、9月残りわずかです。そして、今年もあと4分の1、しっかりがんばっていきます。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、遺留分対策です。遺留分というのはご存じでしょうか。法律で、相続人(兄弟姉妹を除く)に最低限度の取り分をみとめた制度です。つまり、遺言で、自分が本来受け取れる法定相続分以下、もしくはまったくもらえない場合、その者の生活資産の確保のためにできた制度です。例えば、ある人が愛人に全ての財産を遺すという遺言を作った場合、遺された奥さん、家族は路頭に迷うわけです。本来、遺言は遺した人の最後の意思なので尊重すべきですが、その人に近い家族の生活が脅かされるのは大変ということで遺留分があります。ただ、遺留分があるがために、笑う相続人(縁遠い相続人)が遺留分を行使して、縁が深い相続人が逆に生活できない状況になってしまうこともあります。そこで、今回は遺留分を行使されるのを防ぐためにどうすればよいかについて考えます。
遺留分減殺請求は、生前に行うことができない
まず、遺留分に関する請求は、法定相続分より少なく受け取る相続人から多く受け取った相続人に対して行います。これを遺留分減殺請求といいますが、この請求権は絶対的な権利であり権利を行使すると請求された方は基本的に拒否できません。もし相続財産がほとんど不動産の場合、不動産の持分を渡すわけにはいきませんので、多くの場合、請求を受けた相続人が、自分のお金を持ち出すことになります。遺留分という制度は争族を引き起こすものでもあるのです。
そのような遺留分減殺請求ですが、実は亡くなる前、生前に行使することができません。亡くなって自分の権利が侵害されていることを知って初めて権利を行使することができます。
遺留分減殺請求に対する対抗手段とは
上記のように遺留分減殺請求は、相続が始まらないと行使することができません。そのため、相続開始前に対抗手段を考えておく必要があります。一番の対抗手段というのが、生前贈与です。生前贈与は先に契約により法律的な効果が発生しますので、そこで権利確定をすることができます。さらに、生前贈与をすることを、遺留分を行使しようとしている子に事前に話をしておくとより良いです。しかし、生前贈与の注意点もあります。
- 相続開始の1年前に贈与したものは遺留分減殺請求の対象になる。さらに遺留分権利者に損害を発生させることを知ってぞうよした場合は、1年前の贈与も対象になる(民法1030条)。
- 生前贈与は、贈与税、不動産取得税、登録免許税などの必要経費がかかるため(贈与税は相続時精算課税制度があり)それらを考慮しなければならない
しかし、私の考えでは生前贈与は生前に権利が確定しますので、遺留分に対しては一番おすすめの方法です。
また、遺留分対策として、相続人廃除などもありますが、現実的ではありません。遺留分対策で事前にできることは法的対策の他にもありますので、ぜひ当事務所へご相談ください。